皆さんは『機能的非識字』という言葉を知っているだろうか。機能的非識字とは、文字を読むことはできても、文章の意味や内容を理解することが難しい状態を指す言葉である。例えば、電化製品の説明書を読んでも使用方法を理解できなかったり、契約書の内容を正確に把握できない、教科書を読んでも内容が理解できないなどが該当する。つまり、『読めるけど、読めない』という状態のことである。
ここでアレクサンドラ構文として有名な一例を見てみよう。以下の文章を読んで、問いに答えてみてほしい。
『Alexは男性にも女性にも使われる名前で、女性の名Alexandraの愛称であるが、男性の名Alexanderの愛称でもある。』
この文脈において、以下の文中の空欄に当てはまる最も適当なものを選びなさい。
Alexandraの愛称は( )である。
1. Alex
2. Alexander
3. 男性
4. 女性
正解は「1. Alex」
このような文章の意味を正確に読み取れない子供や大人が、実際に少なからず存在することが明らかになっており、この問題を通してわかるのは、実際に「文を読める」と「意味を理解できる」とは同一ではないということである。
この問題の厄介なところの一つは、機能的非識字の問題を抱える人自身にはほとんど自覚症状がないことである。機能的非識字は正しいトレーニングを積めば解決可能とされるが、自覚症状が乏しいために発見と対策が後手に回る傾向にある。
機能的非識字の原因として、スマートフォンや動画メディアの普及による活字離れ、映像や音声コンテンツなどの受動的な情報により自分から能動的に頭を使わない、『雰囲気読み』の習慣化などが挙げられている。それ以外にも、SNSに代表される短くセンセーショナルな文章に慣れてしまい、『主語と述語』『対比』『原因と結果』などの構造を理解しながらじっくりと文章を読まないなどもあるようだ。
こういった問題を放置しておくと、フィーリングで文章を読むため書いてある内容と異なる意味で捉えることが頻繁に起こり、例えば友人からのメッセージを誤解し仲違いの原因になる、契約書の重要事項を理解できないまま契約し後日トラブルになる、ニュース記事が理解できないためフェイクニュースにだまされる、教科書を読んでも内容が理解できないので学力が上がらないなど、日常生活に支障が出る可能性がある。
『あれ、もしかして自分も文章が正しく読めてないかも』『昔から取扱説明書を読むのが苦手で意味が分からなかった』などの経験がある人は、機能的非識字という問題の可能性があるかもしれない。ただし、適切な訓練を繰り返せば後天的に改善可能であることも知っておいてほしい。