まもなく夏になる。夏は受験の天王山であるが、その夏に向けて少しずつ受験戦略を立てよう。行き当たりばったりの夏本番ではなく、少なくとも方向性として、例えばどのような科目や分野に最も集中し時間を割いていくかといったことを考えていこう。
夏は大きく二つの重点課題がある。一つは『武器科目を作ること』、もう一つは『苦手科目を攻略すること』である。どの大学・学部を受けるにしても、武器科目を作り、苦手科目が足を引っ張らない程度までレベルアップするということが基本戦略になるわけだが、特に医学部や難関大を志望している人はその精度が求められる。
自分の志望校が決まっている人であれば、志望校の出題範囲や内容を改めて確認し、頻出分野や傾向を探り、ある程度毎年出題されるような問題は重点的に対策を立てる必要がある。もしそれが得意科目であれば、夏の段階で他の受験生に有意に点差をつけられるだけのレベルまで持ち上げてしまい、逆に苦手科目であれば、他の受験生に負けずとも劣らないレベルまでは達したいところである。
特に理系であれば英数は最重要で、夏が一区切りと考え、そこまでに何とか一定のレベルまで目指してほしい。というのも、夏が終わり秋になると、理科はもちろん、共通テスト対策で国語や社会、情報といった教科への対応も必要になり、英数に十分な時間を割くことが難しくなってしまう。また、英数に大きな課題を残しておくと、精神的にも焦りが生まれ勉強に集中できないといった受験生も毎年発生している。
各受験生の志望校によって、現実的に夏までにどのレベルまで達成すべきか、あるいは達成可能かは個別具体的に塾の先生や学校の先生に指導してもらうのが最善であるが、もし環境が許すならば、そこで指摘された苦手科目や苦手分野は個別指導で対策を行うのがタイムパフォーマンス的にはベストだろう。残り半年というタイミングでは、受験までの時間を逆算し、一人でやれば100時間かかるものを、講師の力を借りて50時間にするといった発想が極めて大切である。そうすれば、残りの50時間で他教科の学習を進めたり、同教科の深掘りをできたりとメリットが多く、限られた時間の中で、このような細かな工夫によって捻出された時間の総和は、一年の受験という時間軸の中では極めて大きな意義をもつ。
一朝一夕にはいかない受験勉強だからこそ、戦略的にどのように学習を進めていくべきなのかを大切にしてほしい。特に夏は最重要な時期なので、決して無為に過ごすことだけはやめて、一定の方向性をもって勉強を進めよう。